狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

ブラピ主演のSF愛あふれる人間ドラマ/アド・アストラ

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ブラッド・ピットが初のSF宇宙作品に挑んだ「アド・アストラ」
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で念願のオスカーを手にしたブラピが、SF映画に主演?...ということで、期待半分不安半分で見た作品でしたが、私の好きなトーンのSF作品で非常に楽しめました。

自閉症をわずらう宇宙飛行士が、海王星へ向かう途中で行方不明となった父親がある計画に携わっていたことを知らされ、司令を受けて宇宙に飛び立つ物語です。
監督は『リトル・オデッサ』で長編デビューを果たし、ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を獲得したジェームズ・グレイ
主人公の父親役に、名優トミー・リー・ジョーンズ
リブ・タイラードナルド・サザーランドが脇を固め、主演を務めたブラピの制作会社プランBがプロデュース。
SF映画でありながら、重厚なヒューマンドラマとしても見応えのある作品です。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー「オデッセイ」のような、最近はやりのノリノリの宇宙ものではなく、淡々と昔ながらのSF映画のような崇高な感じの映像ですが、眠くならない程度にとこどころアクセントになるシーンを挟みながら、自分の人生に多大な影響を与えた父親と対峙する親子の物語でした。

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なんと言っても映像が素晴らしいです。
映画の全体的なトーンが落ち着いてることもあり、宇宙空間や宇宙船の内部など過去の色々なSF映画の傑作へのオマージュを含めた感じで、映像を見てるだけで単純に気持ちいい作品です。
ゼロ・グラビティのような革命性はありませんが、オーソドックスに宇宙の美しさを見せる映像です。
これまでの宇宙もの映画の真似ってわけではなくて、IMAX時代に準じた奥行きのある宇宙表現になっている映像でした。
映画全体のトーンとリンクしているのが最大の理由だと思いますが、とにかく宇宙の崇高さ、美しさを見事に表現していて、監督の宇宙愛を物凄く感じました。

そしてやっぱり主演のブラッド・ピットですね。
とにかくこの映画の9割くらい、画面にに写ってるんじゃないかっていうくらいのザ・ブラピムービーになってます。
ブラピ好きの方はそれだけで満足なんじゃないでしょうか。
全体的に抑えた演技で、でも箇所箇所で抑えていたものを吐き出すような感情的な演技で、正統派の映画におけるブラピの演技の集大成的なものになってます。
「ワンス〜」とは全然違いがます、やっぱり、カッコいいです、ブラピ。
どんな状況でも冷静沈着なエリート宇宙飛行士で、父親に対する尊敬と怒りを含んだ圧倒的に孤独な男を、クールに演じています。
ブラピの俳優的キャリアとしても、すごく重要な作品になっているんじゃないでしょうか。

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ブラピが9割なので、他のキャストが少ししか出てきませんが、父親役のトミー・リー・ジョーンズは出番は少ないですが、老いてもなお探究心に取り憑かれた身勝手な父親を、いつものように素晴らしい演技をしてます。
また冒頭部分だけですが、ドナルド・サザーランドが良かったですね。
こういう普通なのに物語に深みを入れる役を演じるって、結構難しいと思うのですが、ベテランの何でもできる役者さんが演じると映画が締まりますね。

この映画、2001年や宇宙版・地獄の黙示録なんてふれこみでしたが、個人的に思ったのは「メッセージ」や「ブレードランナー2049」といった、ドゥニヴィルヌーブのSF作品のトーンに似てるものを感じました。
特にブレードランナー2049」の孤独な哀愁に満ちたロードムービー的な放浪感とはかなり近い印象を持ちました。
主人公のキャラクターが似ているというのもあって、「ブレードランナー2049」が大好きな私にとって、そういう雰囲気を途中から感じて、気持ちいい時を過ごせましたね。
俳優もライアン・ゴズリングとブラピってなんとなく近い気もするのは私だけでしょうか。

また、SFもの、宇宙ものにはマストな要素ですが、デザインがかっこいいですね。
リアルなNASAっぽい感じの既存の宇宙的デザインと「2001年宇宙の旅」などのオールドスクールSF映画のデザインも含んでいて、特に宇宙服のヘルメットのゴールドが印象的でした。
月面を探索車で走るシーンがあるのですが、そのシーンは画面が黒とシルバーとアクセントカラーのゴールドだけで表現されていて、ものすごくかっこいいビジュアルでした。

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撮影監督が「インターステラー」をとったホイテ・ヴァン・ホイテマということで、無重力のシーンを、水平や垂直のセットで効果的に撮影する方法など、いろいろな場面で撮影監督の経験が役に立っているそうです。
インターステラー」の象徴的シーンである本棚の裏の宇宙空間のようなシーンは、アイデアだけでなく経験があった方がより効果的に撮影できますからね。
今はCGで何でも出来る時代ですが、人間の映るシーンはできるだけ特撮の手法でとった方がリアルに表現できるので、私はそっちの方がいいと思います。

ブラピとジェームズ・グレイ監督はは90年代半ばからの交友関係で、ブラピがこの映画の脚本をもらった時、監督が映画的なヒーローを極めてパーソナルな視点から描いていることに感銘を受けたそうです。
人間として、父親として、さらに息子としても、心を動かされたと語っています。
ジェームズ・グレイ監督は、「歴史や神話は常に個人的なミクロコスモスから始まる。だから本作も、できる限り小さな個人的なストーリーを、可能な限り大きなタペストリーのなかで描きたかった」と語っています。
思想的、観念的な映画って感じを受けますが、父と子の関係を描く物語の舞台を「宇宙」という途方もなく大きな場所で展開したということで、エンターテイメントとしても十分に優れた一級品の作品となっています。
ブラッド・ピット渾身の作品といった感じで、彼のキャリアにおいても重要な位置を占める作品となってますので、是非ご覧いただきたいと思います。

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