狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

シャイニング/天才監督が創造した原作無視の芸術的ホラーをあらためて検証

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ホラー映画.....というより映画史の中においても名作であるスタンリー・キューブリック監督の作品「シャイニング」

13日の金曜日エルム街の悪夢などの作品のようにシリーズ化しているわけでもなく、 これだけ一般的知名度のあるホラー映画は珍しいですね。

2019年にようやく続編である「ドクタースリープ」が公開されましたが、スティーヴン・キングの原作も2013年にやっと発表されたということからもわかるように、 あまりにも映画版のインパクトが強すぎて、ハードルが高くなったためになかなか続編が作られなかったと言ってもいいでしょう。

私もはじめて見た高校生の時、その当時流行していたホラー映画がバタリアンのようなコメディ要素の強いホラー映画が主流だったということもあって「?」という感想でした。

しかし何か得体の知れない魅力のある映画だと思い、何度も見ていくうちにこの映画の虜になっていきました。

もしかすると「シャイニング」が私を映画好きにさせていった最初の作品になったかもしれません。

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有名な斧でドアをぶち破って覗くシーンなど要所要所にホラーカットがありますが、 どちらかというと初めて見た芸術映画というイメージをもちました。

「シャイニング」にハマった後、すぐに2001年宇宙の旅を借りてきて.....全くわけがわかりませんでした、当時は。

後の映像作家たちへの影響も計り知れないし、 また数多くパロディにされるくらい、この作品はアイコン的な作品ですね。

スティーブン・スピルバーグ監督作品レディ・プレイヤー1でも長尺でオマージュされていましたが、 ホラー映画だけでなく、普通のドラマやSFの作品、コメディ等にも、この映画の様々なシーンがオマージュされています。

ではこの映画がなぜ後世に語り継がれるような名作であるのかという理由を、私なりに考えてみました。

 

 

一点透視図法を多用した圧倒的映像の美しさ

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私は映画を見る時は映像から入るタイプですが、この作品がきっかけでそういう鑑賞の仕方になった気がします。

2001年宇宙の旅」からキューブリックの代名詞となった「一点透視図法」というパースを意識した奥行きのある絵作りは、 芸術的観点からいえば、映画史において一番の美しい映像表現ではないでしょうか。

左右非対称を左右対称に錯覚させるような空間術で、 レオナルド・ダ・ビンチなどのルネサンス絵画のような美しさと、圧倒的画力を感じさせる絵作りです。

崇高さをすごく感じる絵ですし、この空間の魔力に惹かれると、映像を見ているだけで気持ちいい感覚になってきます。

ストーリーなんてどうでもいい...とさえ思ってしまいます。

キューブリックといえば、まずこの画面構造が思い浮かびますし、特にSF映画などに顕著ですが、 この構図が冒頭部分に登場する映画は、良い映画じゃないかと思って見てしまいますね。

デザインの勉強をはじめた時、この構図が出てきた時にはキューブリックを思わず連想しました。

それくらいインパクトのある絶対的に美しい構図です。

恐怖を連想させる「白」と「赤」の使い方

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キューブリックの映像は「白」「赤」の印象が強いですね。

この作品でも、有名なエレベーターから血の洪水が溢れ出てくるシーンの恐ろしく鮮明な「赤」や、 ラストのジャックが子供を追い回すシーンの雪景色の「白」が印象的です。

この作品では「赤」は恐怖の象徴に、そして「白」は雪深いイメージから絶望の象徴に使われてる感じがします。

先程の空間演出にも通じますが、もともとカメラマン出身ということもあり、 美術的な部分における独自の美学が強い監督ですし、美術畑出身の人の映画は、どこかにちょっとした恐怖を感じますね。

「白」という色は清楚な印象がある反面、冷たいイメージもありますし「赤」は緊張感や恐怖をイメージできますし、 この2つの色をうまく画面に使うことで、観客を常に緊張状態にしているのがキューブリックの特徴のひとつでもあります。

2001年宇宙の旅」やアイズ・ワイド・シャットなども絶えず不穏な空気感が持続していますし、 時計じかけのオレンジフルメタル・ジャケットにおける恐怖へ通じる緊張感などにもあらわれています。

よってホラー映画を手がけたことはキューブリックとしては当然のことですし、 逆にホラー映画だから特別に恐怖感を意識しなかったため、「シャイニング」は作品全体としてはそれほど怖い印象がないですね。

でもキャッチーともいえる印象的な怖いシーンが数カ所あるために、怖い映画だという印象をもたれているのではないでしょうか。

子供目線で恐怖を演出

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ジャックの息子ダニーが三輪車に乗ってホテルを走る最中に、双子の少女の亡霊に出会うシーンは、 観客をダニー目線の低いアングルで見せることによって、より恐怖を感じるようになっています。

移動映像をスムーズに撮影できるステディカムというカメラが開発されたばかりの時期だったこともあり、 それを積極的に使用していかにも三輪車をこいでる途中で急に双子の少女が現れるという、 驚きの映像を擬似体感できるようになっています。

広いホテルの中が舞台ですので、逃げ回るシーンやラストの迷路のシーンなどステディカムが随所で大活躍してます。

この映画は普通のホラー作品のように突然驚かせる「お化け屋敷方式」のシーンはあまりありませんが、恐怖シーンはすべて登場人物のアングルになっているので、ジワーっと長く恐怖をひきずる感覚が続きます。

薄目をあけて見ながら、そろそろ怖いシーンになるぞと思っていると、意外と怖くないのですが、 恐怖一歩手前の来るぞ来るぞーという気持ち悪さをずっとひきずってる感じですね。

そういった点があまりジャンル映画っぽく語られない要因かもしれません。

ハイライトシーンのキャッチーな絵面

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そしてこの映画のハイライトで、ポスターやDVDパッケージなどにデザインされてる、 この映画の顔というべきシーンの、ジャックがドアの亀裂から顔を出してるシーン

「シャイニング」といえば、ほとんどの人がこのシーンを連想しますし、ものすごくキャッチーな絵面ですね

観客をひきつけるのにはこのポスターだけで十分なくらい、広告デザインとしても100点満点のビジュアルです。

このシーンは200近いテイクを重ねて撮影されたようですが、このシーンの撮影風景の動画がアップされていたので見てみると、 撮影前からジャック・ニコルソンが完全にイっちゃってます。

映画のジャックとあまりにも同化しすぎていて、斧をもっていることもあり、 スタッフに襲いかかるんじゃないかと心配になるくらいのテンションでした。

ダークナイトでジョーカーを演じたヒース・レジャーがなくなった原因も、役にとりつかれた影響じゃないかと言われてるますが、 俳優はあまり異常なキャラクターの役になりきりすぎると、とんでもないことになりそうだなと思った動画でした。

ジャック・ニコルソンを知らない若い人でも、このシーンの写真を見せたら「あ!見たことある!」というくらい有名な絵ですね。

構図的にも最高です。

ジャックニコルソンの伝説的怪演

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ではその流れで、キャストについても語っていきましょう。

まずは、何と言ってもジャック・ニコルソンですね。

私にとってジャック・ニコルソンはこの役のイメージが強すぎるので、 普通のドラマの映画に出てきても、後で狂った行動に出るんじゃないかと毎回思ってしまいます。

顔も普段から危険そうですから。。

この映画の後に、カッコーの巣の上で「郵便配達は二度ベルをならす」等を見て、ジャック・ニコルソンに結構ハマった時期があったのですが、 ロバート・デ・ニーロアル・パチーノと違ってニコルソンをかっこいいと思ったことは一度もありませんね笑。

しかしスクリーンに出てくる時のインパクトだけでしたら、多分どの俳優よりも一番存在感がある役者ですね。

そんなアクの強いルックスなのに、演技が凄く上手いというのが反則です!

三度目のオスカーを手にした「恋愛小説家」なんて、あんな顔であれだけ繊細な演技ができる人なんて卑怯です!

演技力だけで、これだけの映画で主役をはっている役者はそれほどいないですからね。

ニコルソンが主人公にキャスティングされた時、原作者のスティーブン・キングは反対だったらしく、原作のジャックはアルコール依存症なだけの小市民的なキャラクターなので、 ニコルソンでは気が狂ってもおかしくないルックスですし、 自分の原作と違う感じになるのがこの時点で予感したんじゃないでしょうか。

しかしキューブリックは全く耳を貸さずニコルソンに主役を演じさせ、 現在はどう考えてもこちらの方が正解だと思える結果ですね。

主役に負けない怖い顔の妻と目力が凄い子役

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この映画がインパクトが強すぎる理由として、加害者の夫だけでなく被害者の妻も怖い顔というところがあると思います。

ということで、ジャックの奥さん役のウェンディを演じたシェリー・デュヴァルの歴史的怪演が凄いです。

最初見た時何が一番怖かったというと、この女優さんの顔でしたね。

今でも夜中この顔見たら怖いです。

撮影時にキューブリックが激しく当たっていたらしく、 そういった精神的なものも重なったからというのもあるらしいですが、本当に素晴らしい顔芸ですよね。

いろんな意味でその後のホラー映画のやられ役に影響を与えたと思います。

ティム・バートンのアニメに登場するキャラクターは、この映画での彼女の顔がモチーフになっていそうですし、 オリジナル版の実写版「フランケン・ウィニーに出演してるのも興味深いですね。

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そして子役のダニー・ロイド君もかわいいのですが、すごい目力のある演技ですね。

小さいのにダニーと内なる存在のトニーをうまく使い分けて、さすが5000人から選ばれた男の子です。

俳優業からは早々に引退したようで、現在はケンタッキー州にある大学で生物学の教授をしているそうです。

子役はマコーレー・カルキン君に代表されるように、かわいそうな運命をたどることが多い中、 幸せな生活を送ってるようで良かったですね。

音楽・美術について

音楽.....というかほぼ効果音のような弦楽奏がつづきますが、音楽は規制曲をうまく使っているようです。

恐怖をかりたてるための必要最小限な音ですが、 なんとなくスティーブン・キングの原作はこの作品で使ったような音楽があってる気がします。

美術についてはキューブリックの映画は毎回素晴らしいのですが、 この作品も豪華で荘厳なホテルの美術が素晴らしいですね。

トイレなど所々にキューブリックらしい未来感のあるデザインになっているのも印象的です。

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映画好きに圧倒的に支持され、映画を知らない人にもなんとなく知っているというくらい有名すぎる作品ですが、 まだ見ていない人はぜひ見てくださいね。

ホラーが苦手な私がいうのも変ですが、それほど怖くありません。

できれば大きい画面で見て欲しいですね、、映像が美しいので。。

 

 

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